日経平均が膠着し、円安によるインフレが家計を圧迫する中、次の成長市場を探している日本の投資家の皆さん。長年、「新興国投資といえば中国」という常識がありましたが、その前提が崩れ去ろうとしています。本日、2026年1月19日、IMF(国際通貨基金)がインドの経済成長率予測を従来の6%台から7.3%へと大幅に上方修正しました。これは中国の4%台の成長予測を大きく引き離す数字です。マーク・モビアス氏がポートフォリオの30%をインドに配分すると公言する中、私たち個人投資家は、この数値をどう捉え、新NISAの成長投資枠をどう活用すべきなのでしょうか?一時のブームではなく、構造的な資産シフトのチャンスが到来しています。

1. 構造的な分岐点:なぜチャイナマネーがインドへ向かうのか
過去20年間、新興国投資の主役は間違いなく中国でした。しかし2026年現在、データはその主役交代を明確に示しています。投資家は今、政府の財政出動に頼る成長ではなく、人口動態に基づく自然な成長を求めています。
1.1 日本が失った「人口ボーナス」の恩恵
日本や中国が急速な少子高齢化に直面している一方で、インドはまさに「人口ボーナス期」の絶頂にあります。インドの中央年齢(メディアン)は28.4歳です。対する日本は49歳、中国は39歳です。これは、今後数十年にわたり、住宅を購入し、家電を買い、教育に投資する現役世代が増え続けることを意味します。内需主導型の経済は、世界的な景気後退に対する強い耐性を持っています。
1.2 IMF予測更新が示すマクロ経済の意味
本日発表されたIMFによる2025-2026年度の成長率7.3%への上方修正は、モディ政権下の構造改革が結実していることの証明です。特に重要なのは、これが借金頼みのインフラ投資ではなく、民間企業の設備投資(Capex)と個人消費の回復によって牽引されている点です。長期投資家にとって、これほど質の高い成長ストーリーは希少です。
| 比較項目 | 中国 (かつてのリーダー) | インド (現在の挑戦者) | 投資家への示唆 |
|---|---|---|---|
| GDP成長率 (2026予測) | 4.6% (減速傾向) | 7.3% (加速傾向) | 資金はより高い成長率を求めて移動します。 |
| 生産年齢人口 | 減少中 (2014年ピーク) | 増加中 (2040年代まで) | 長期的な消費市場の拡大が約束されています。 |
| サプライチェーン | 成熟・脱中国の動き | 「チャイナ・プラス・ワン」の筆頭 | 供給網の多角化による最大の恩恵国です。 |
2. 製造業の台頭:IT下請けから「世界の工場」への変貌
かつてインドは「世界のバックオフィス(IT下請け)」と揶揄されていました。しかし、そのイメージは過去のものです。「メイク・イン・インディア」政策はスローガンを超え、輸出データとして実を結んでいます。
2.1 Apple生産移管と半導体への野心
2025年末時点で、世界のiPhone生産の約18%がインドで行われています。これは5年前には考えられなかった数値です。さらに、マイクロン・テクノロジーなどの世界的企業が半導体工場の建設を進めており、ハイテク製造業のエコシステムが形成されつつあります。これはインドの産業セクターが、単なる低賃金労働力の提供から、高付加価値な製造ハブへと進化したことを意味します。
2.2 インフラ革命と物流コストの低下
インド投資の最大のボトルネックは、劣悪な道路事情と物流の遅さでした。しかし、専用貨物回廊の完成により、GDP比で割高だった物流コストが急速に低下しています。これは企業の営業利益率(マージン)を直接的に改善します。セメント、鉄鋼、電力などのインフラ関連企業は、この建設ブームを背景に記録的な受注残を抱えています。
| セクター | 過去の認識 | 2026年の現実 | 注目ポイント |
|---|---|---|---|
| エレクトロニクス | 純輸入国 | 新興の純輸出国 | 電子部品サプライヤーや物流企業。 |
| 銀行 | 不良債権問題 | 健全なバランスシートと貸出増 | 民間の大手銀行はPEGレシオで見て割安。 |
| エネルギー | 石炭依存 | 積極的なグリーン転換 | リライアンスやアダニ等の財閥系企業。 |
3. 実践投資ガイド:日本の投資家が狙うべきETFとADR
日本の個人投資家がムンバイ証券取引所の個別株を直接買うのはハードルが高いですが、主要なネット証券を通じて米国上場のETFやADR(米国預託証券)を購入することは容易です。
3.1 ETFで市場全体をカバーする
最も一般的な選択肢は、iShares MSCI India ETF (ティッカー: INDA)です。インド市場の大型株を網羅しており、流動性も高いため、新NISAの成長投資枠での長期保有に適しています。一方、効率性の低い国有企業を避け、実益重視で投資したい場合は、WisdomTree India Earnings Fund (ティッカー: EPI)が賢明な選択です。EPIは利益に基づいて銘柄を組み入れているため、INDAに比べてPER(株価収益率)が低く、エネルギーや素材セクターへの露出が高くなります。
3.2 個別株(ADR)でアルファを狙う
個別株を選定するなら、HDFC銀行 (ティッカー: HDB)は外せません。インド最大の民間銀行であり、中間層の拡大に伴うリテール金融の爆発的な普及の恩恵を直接受けます。また、ITセクターではインフォシス (ティッカー: INFY)が堅実です。世界的なIT投資減速の中でも、AI導入支援へと舵を切り、安定したキャッシュフローと配当を提供しています。
4. リスクとバリュエーション:インド株は割高なのか?
投資にリスクは付き物です。特にインド株は「インド・プレミアム」と呼ばれる割高な評価が常について回ります。
4.1 バリュエーションの正当性
現在、インドの代表的な株価指数であるNifty 50の予想PERは約22.4倍です。日経平均や中国株に比べると明らかに割高に見えます。しかし、企業の利益成長率が年率15〜18%であることを考慮すると、PEGレシオ(PER÷成長率)は約1.3倍となり、決してバブル水準ではありません。「成長を買うためのプレミアム」としては許容範囲と言えるでしょう。
4.2 官僚主義と為替リスク
改革は進んでいますが、インドの許認可行政は依然として複雑です。また、日本の投資家にとってはルピーと円の為替リスクも無視できません。米国株市場経由(ドル建て)で投資する場合でも、基軸通貨であるドルと新興国通貨ルピーの変動、そして円ドルの変動という二重の要素が絡みます。長期積立で時間を分散させることが、最も有効なリスクヘッジとなるでしょう。
参考文献
- IMF (国際通貨基金), “World Economic Outlook Update”, 2026年1月.
- Bloomberg, “Interview with Mark Mobius regarding India”, 2026年1月16日.
- インド商工省, “輸出統計およびPLIスキーム進捗報告書”, 2025年12月.
免責事項 (Disclaimer)
本コンテンツは情報提供のみを目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資には元本割れを含むリスクが伴います。最終的な投資判断は、必ずご自身の責任において行い、必要に応じて専門家にご相談ください。









